「肩が痛くて、思い切りサーブが打てない」
そんな悩みを抱えたまま、週末のコートに立っている方はいませんか。
僕はテニス歴15年のITワーカーです。平日はデスクに向かい、コードを書き、週末はラケットを握る。その二刀流生活の中で、肩の慢性的な痛みは長年の「バグ」でした。
これまでの記事で、ポリ単張りから「アルパワー×XR3」のハイブリッドへ、そして「メインXR3(ナイロン)×クロスアルパワー(ポリ)」へとセッティングをデバッグし続けてきました。そして今回、ついにその”最終形態”に辿り着きました。
バボラ Touch Tonic(ナチュラル)× ルキシロン 4G(ポリ)のハイブリッドです。



この記事では、実際に打ち込んで感じた打感・スピン・球速の変化を忖度なくレポートします。「ナチュラルストリングって実際どうなの?」「肩への負担は本当に減るの?」という疑問に、一次体験をもとにお答えします。
なぜナチュラルストリングへ踏み切ったのか|前セッティングの”デバッグ完了”
前回のセッティングは「メインXR3(ナイロン/マルチフィラメント)× クロスアルパワー(ポリ)、テンション45/42ポンド」という構成でした。
このセッティングが、ある意味で完璧すぎる結果を出してしまいました。
ストリングが、2ヶ月で切れたのです。
ポリ単張り1.20mmゲージを使っていた頃の僕は、「切れるより先に緩む」タイプでした。テンションが落ちてもなかなか切れない、いわゆる”ストリングを切れない派”です。それが、サーブを振り抜いた瞬間にブチッと切れた。
これは単なるストリングの消耗ではありません。肩の痛みが軽減されたことで、無意識に腕の振りが大きくなっていたという証拠です。セッティングの変更が、スイングそのものを変えていた。この事実が、ナチュラルへの挑戦を後押ししました。
今回のセッティング詳細|Touch Tonic × 4Gを選んだ理由
セッティングスペック
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| ラケット | HEAD Speed Tour 2026 |
| メイン(縦) | Babolat Touch Tonic(ナチュラル) |
| クロス(横) | Luxilon 4G(ポリ) |
| テンション | メイン 45ポンド / クロス 42ポンド |
なぜ「Touch Tonic」を選んだのか
ナチュラルストリングの中でも、バボラのTouch Tonicを選んだ理由は「ハイブリッド用途に最適化されている」という点です。ナチュラルストリングは一般的にポリとの組み合わせで摩耗が早まるとされていますが、Touch Tonicはコーティング処理が施されており、ハイブリッドでの耐久性が考慮されています。
また、バボラはプロ選手への供給実績も豊富で、ナチュラルストリングの製造において世界トップクラスのメーカーです。初めてナチュラルに手を出す際の「信頼できる一本」として、この選択は理にかなっていると判断しました。
なぜクロスを「4G」にしたのか
前回のクロスはアルパワーでした。アルパワーは打感と反発のバランスが優れている一方、テンション維持性能はポリの中でも平均的とされています。
僕のウィークポイントは「張り替え頻度の低さ」です。週1〜2回のプレーで、張り替えのタイミングを逃しがちなITワーカーにとって、テンション維持性能が高い4Gは合理的な選択でした。4Gはルキシロンの中でも特に「テンション維持」と「ボールの深さ」に定評があり、緩んできたときのコントロール性の落ち方が緩やかです。
実打インプレッション|3つの変化と1つのトレードオフ
約3週間、計6セッション(主にシングルス練習とサーブ練習)でこのセッティングを使い込みました。感じた変化を正直にレポートします。
① 張りたての「ベトっ」から始まる「もっちり感」
最初の一打は、正直戸惑いました。
「ベトっとする」という感覚。ポリやナイロンでは感じたことのない、独特の粘り気がありました。「これが高価なナチュラルの打感なのか…?」と少し不安になったほどです。
しかし、5〜6球打つうちに感覚が変わりました。ボールがガットに吸い付くように乗り、そのまま弾き返される感覚。カーボンパドル(ピックルボール)の「掴む」感覚に近いとも言えますが、それよりもさらに柔らかく、有機的です。
この「もっちり感」こそがナチュラルストリングの真髄だと、数球で理解できました。
② スピンと弾道の変化|「回転と飛距離の両立」
前セッティング(XR3×アルパワー)で最も懸念していたのが、スピン性能の低下でした。メインをポリからナチュラルに変えることで、ボールへの食いつきが変わり、回転がかかりにくくなるのでは、と。
結果は、完全に杞憂でした。
むしろ逆です。Touch Tonicのホールド感がボールをしっかり掴み、スナップバック(ストリングが元の位置に戻る動き)が促されることで、スピン量が体感で増しました。着弾後のバウンドが鋭く跳ね上がり、練習相手からも「球質が変わった」と指摘されたほどです。
飛距離についても、XR3×アルパワーの時より「よく飛ぶ」印象。ただしこれは、肩を気にせず振り切れるようになったスイングスピードの向上も影響していると思います。道具と身体の相乗効果です。
③ 肩への衝撃|「ほぼゼロ」という体験
これが最大の目的であり、最大の成果です。
サーブを全力で打ち込んでも、肩に「ドスッ」とくる不快な衝撃がほぼ感じられません。XR3×アルパワーで大幅に改善されていた衝撃吸収が、さらにワンランク上がった感覚です。
練習後の肩の疲労感が明らかに違います。以前は練習翌日の月曜朝、肩に鈍い重さを感じながらキーボードを打っていました。今は、その感覚がほぼありません。これがITワーカーとして、最も実感できる「投資対効果」です。
④ 唯一のトレードオフ|球速(スピード)の低下
忖度なしで書きます。
球速は、落ちています。
もっちりとした打感がエネルギーを吸収する分、爆発的なフラットドライブで相手を吹き飛ばすような球は出しにくくなりました。スピードで押し込むというよりは、回転と深さでコントロールするスタイルに自然と誘導されます。
これがデメリットかどうかは、プレースタイル次第です。スピードボールを武器にしているプレーヤーにとっては大きな損失かもしれません。しかし現在の僕のテニスは「肩を守りながら、長くプレーを続けること」が最優先。その文脈では、このトレードオフは十分に受け入れられるものです。
ITワーカー視点のコスト分析|「高い」は本当か
ナチュラルストリングの最大の障壁は、価格です。Touch Tonicは1セット(1張り分)で3,000〜4,000円前後。ナイロンやポリの2〜3倍のコストがかかります。
しかし、ITワーカーとして「コスト」を以下のように再定義すると、見方が変わります。
① 医療費・通院コストとの比較
肩の痛みを放置した場合、整骨院や整形外科への通院が必要になります。1回あたり数千円の治療費と、平日の仕事を削る通院時間。それを未然に防ぐための「予防投資」として考えれば、月に1回の張り替えコスト増(約2,000〜3,000円)は十分に合理的です。
② 仕事パフォーマンスへの影響
月曜日の朝、肩の痛みなくキーボードを打てることの価値は、定量化できません。しかし、慢性的な痛みが集中力・作業効率を蝕むことは、多くのデスクワーカーが経験していることです。週末のテニスが「月曜のコンディション悪化の原因」にならないこと。これは、ITワーカーとしての生産性を守る「攻めの投資」です。
③ モチベーションの維持
最高の道具を使うことは、コートへ向かう動機付けになります。「今日もあのもっちりした打感を味わいに行こう」という気持ちは、運動習慣の継続に直結します。健康的な習慣の継続コストとして考えれば、ナチュラルストリングの価格差は小さなものです。
リカバリー戦略との組み合わせ|道具だけに頼らない
ストリングを変えることは「守りの一手」ですが、それだけでは不十分です。僕が並行して実施しているコンディショニング戦略もご紹介します。
練習後のケア:LIHILIS 筋膜リリースガン
テニス後は必ず、肩・前腕・背中を中心に筋膜リリースガンでケアを行います。ストリングによる衝撃軽減と、練習後の筋膜ケアの組み合わせが、翌日への疲労持ち越しを最小化します。

活動量の可視化:Xiaomi Smart Band
睡眠の質と活動量をデータで管理することで、「今日は無理をしない」という判断ができます。テニスの強度をデータで把握し、オーバートレーニングを防ぐことも、長くテニスを続けるための重要な戦略です。

【まとめ】
今回の「Touch Tonic × 4G」ハイブリッドは、現時点での僕のベストセッティングです。
改めて整理すると、このセッティングの特徴は以下の通りです。
- ✅ 肩への衝撃:ほぼゼロ(過去最高の衝撃吸収)
- ✅ スピン性能:向上(ホールド感によるスナップバックの促進)
- ✅ 飛距離:向上(スイングスピードの解放との相乗効果)
- ⚠️ 球速(スピード):低下(もっちり感によるエネルギー吸収)
- ⚠️ コスト:高い(ただし「投資」として合理的と判断)
「痛みを我慢して道具に合わせるのではなく、今の自分の身体に合うよう道具をデバッグする」。
このシリーズを通じて一貫してきたこの哲学は、ナチュラルストリングという選択肢によって、ひとつの答えを出せたと感じています。
次回は、クロスを「4G」から「アルパワー」に戻した際の球速変化をデバッグする予定です。ハイブリッドの微調整は、まだ続きます。
肩に不安を感じているテニスプレーヤーの方、特にデスクワークとテニスを両立させているITワーカーの方に、この記事が少しでも参考になれば幸いです。
