はじめに:肩の痛みが、ラケット選びの基準を変えた
以前の記事でも触れましたが、僕は一時期、テニスによる肩の痛みに悩まされていました。ストリングセッティングの見直しでかなり改善してきたものの、当時はそれに加えて「ラケットそのものの重さ」も見直したいと考えていました。
そこで目に留まったのが、Prince(プリンス)の看板シリーズ「グラファイト」から登場した、PHANTOM GRAPHITE 100XS(285g)です。同シリーズには300gモデルもありましたが、迷わず285gの軽量モデルを選びました。理由は単純で、当時の自分にとって「とにかく軽さが最優先」だったからです。


なぜ「グラファイト」の軽量モデルに惹かれたのか
グラファイトは、Princeの中でも古くからあるシリーズです。他のラケットが新素材やテクノロジーで年々姿を変えていく中、グラファイトは薄いフレーム、変わらない形状を貫いてきた「硬派」なイメージを個人的に持っていました。
そんなグラファイトから、285gという軽量ボディに加えて、ストリングパターンが16×18という、これまでのイメージとは違う方向性のモデルが出てきたことに興味を惹かれました。「あの硬派なグラファイトが、急にこっちに来るのか」という意外性が、購入の後押しになったのは事実です。ただ、繰り返しになりますが、一番の決め手はあくまで「軽さ」でした。
最初のセッティング:サービスガット(Syn Gut)は合わなかった
購入時、ショップのサービスとして張ってもらったのが、バボラの「Syn Gut」(ナイロン、45ポンド)でした。
正直に言うと、このガットは自分には合っていなかったと感じています。
- 飛び: それなりに飛ぶ
- 回転: かかりにくい。ナイロンなので仕方のない部分ではあります
- 硬さ: 特に硬すぎず柔らかすぎず、「それなり」という印象
そもそも僕はナイロンガット自体があまり好きではなく、2〜3回使った時点で、愛用しているポリエステルガット「ポリツアーレブ」(42ポンド)に張り替えました。


実打インプレッション:「柔らかさ」と「ボールを包み込む」感覚
ポリツアーレブに張り替えてからのインプレッションが、このラケットの実質的な評価になります。
飛び・弾道について:グラファイトらしい「飛ばなさ」
グラファイトだからか、全体的にボールの飛びは良くありません。さらに16×18というストリングパターンが影響しているのか、思っていたよりボールがショートする感覚がありました。
これは裏を返せば、打ち込んでもコートに収まりやすいという利点でもあります。飛びすぎないぶん、アウトを気にせず振り抜ける安心感はありました。
サーブ・ストローク:高さは出しやすく、ポリツアーレブでよく回転がかかる
サーブ・ストロークともに、ボールの高さは出しやすいです。ポリツアーレブに変えてからは回転もしっかりかかり、ボールがよく跳ねる感覚がありました(Syn Gutの時に感じていた「回転のかかりにくさ」は、ガット由来の部分が大きかったと思います)。
ボレー:軽さゆえの操作性の良さ
285gという軽さは、ボレーで特に活きます。とっさの反応でも振り遅れにくく、操作性の良さを感じました。
フレームの柔らかさ:「打点が分かりにくい」諸刃の剣
このラケット最大の特徴は、フレームの柔らかさです。ボールを包み込むような打球感で、硬めのラケットを好むプレイヤーからすると「どこで捉えているのか分かりづらい」と感じる可能性があります。
一方で、この柔らかさのおかげで、軽量ラケットにありがちな「打ち負け」を感じたことはありません。多少振り遅れても、ボールを包み込むようにそのまま運んでいける懐の深さがありました。
スピンラケットだが、あえての「フラットドライブ」が合う
分類上はスピン系のラケットに入りますが、個人的にはスピンをかけるより、フラットドライブで叩く方が良い打感が得られると感じました。飛びが控えめな分、フラット気味に叩いてもコートに収まりやすいという、この記事の前半で触れた特性とも合致します。
メインラケット(Speed Tour 2026)との比較
普段のメインラケットであるHEAD Speed Tour 2026と比較すると、違いがより明確になります。
| 項目 | Speed Tour 2026 | PHANTOM GRAPHITE 100XS (285g) |
|---|---|---|
| 操作性 | 良好 | 100インチの面の割に、こちらも良好 |
| 打感 | しっかりめ | 柔らかい |
| 飛び | あり | 控えめ |
| 体感の疲労度 | 楽 | しんどい |
面白いのは、Speed Tourの方が重量があるにもかかわらず、扱っていて「楽」に感じるのはSpeed Tourの方だという点です。グラファイトは軽いラケットのはずなのに、打感の柔らかさや飛びの控えめさが影響してか、振り込んでいくと体感的にしんどさを感じました。「軽い=楽」ではないという、実際に使ってみないと分からない発見でした。
正直なデメリット
- 飛びが控えめ: グラファイト素材とストリングパターンの組み合わせにより、ボールの伸びを求める人には物足りなく感じる可能性があります
- 打点が分かりにくい: フレームの柔らかさゆえに、硬めの打感を好む人には「どこで捉えたか」の手応えが薄く感じられます
- 体感の疲労度: 軽量ラケットながら、打ち込んでいくと意外と体力を使う印象があり、「軽い=疲れない」とは限りません
- ナイロンガットとの相性: 少なくとも僕の場合、サービスガットのSyn Gutとの相性はあまり良くありませんでした。ポリエステル系のガットの方が、このラケットの特性を活かせると感じています
どんな人に向いているか
柔らかめの打感を好み、かつある程度ボールを叩ける体力がある人であれば、ストロークでアウトすることも少なく、扱いやすいラケットだと思います。逆に、硬めの打感でしっかりとした手応えを求める人や、飛びの良さを重視する人には物足りないかもしれません。
余談ですが、このラケットは女性プレイヤーに人気があるという話も耳にします。正直、僕自身はその理由をまだ明確には掴めていません。軽さと柔らかさのバランスが、何か特定のプレースタイルと相性が良いのかもしれません。
まとめ:メインにはしないが、意味のある一本
結論として、このラケットを僕のメインラケットにすることはないと思います。飛びの物足りなさと、打ち込んだ時の体感的なしんどさが、普段のプレースタイルとは合わない部分がありました。
それでも、肩の状態が良くない時期に「軽さ」を優先して選んだ一本として、当時の自分には確かに意味がありました。硬派なグラファイトシリーズが、あえて軽量・広めのストリングパターンというこれまでと違う方向性を打ち出してきたこと自体も、興味深い試みだったと思います。
体を労りながらテニスを続けたい方、柔らかい打感が好みでかつ振り切れる体力がある方には、一度試打してみる価値のあるラケットです。

